パーキンソン病のご家族を介護されている方の多くが、一度はこうした葛藤を抱えます。
施設入居は、介護をあきらめることではありません。ご本人が安全に過ごせる環境を整え、ご家族が「介護要員」ではなく「家族」として関われる時間を取り戻すための、一つの選択肢です。この記事では、施設入居の検討を始める目安となるタイミングについて、いくつかの視点からご紹介します。
「今すぐ決めなければ」ということではなく、「知っておくと、いざという時に落ち着いて判断できる」ための情報として読んでいただければと思います。
1. 医学的なケアの負担が大きくなってきた時
パーキンソン病が進行すると、転倒の頻度が増えたり、飲み込みの状態が悪化して誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん:誤嚥(食べ物や唾液などが誤って気管に入ること)をきっかけに、細菌が肺に入り込んで起こる肺炎のこと) を繰り返したり、薬の効き方にムラが出て服薬管理が難しくなったりすることがあります。こうした変化は、在宅での対応の負担を大きくする要因の一つです。
看護師や介護士が配置されている施設では、日々の体調の変化に気づきやすく、必要に応じて医療機関と連携しやすくなるというメリットがあります。ただし、対応できる医療的ケアの範囲は施設によって差があります。看護師の配置時間、たんの吸引や経管栄養への対応可否、提携している医療機関など、具体的な体制は施設ごとに確認が必要です。
2. 介護をするご家族の負担が大きくなってきた時
「夜間のトイレ介助で眠れない」「腰痛が悪化してきた」「介護のことで頭がいっぱいになっている」
こうしたサインは、ご本人の状態だけでなく、介護をするご家族の状態にも目を向けるべき時期を示しています。
介護は長く続くものだからこそ、ご家族が心身ともに無理をし続けてしまうと、共倒れにつながりかねません。施設のサービスを利用することは、ケアの質を保ちながら、ご家族自身の生活や健康を守ることにもつながります。大切なのは、「家族が限界になってから利用するものではない」ということです。
施設入居のほかにも、デイサービスやショートステイ、訪問介護・訪問看護など、在宅生活を続けながら負担を軽くする方法もあります(こうしたサービスは「レスパイトケア」とも呼ばれます)。
3. ご本人の生活の中で、楽しみや人との関わりが少なくなってきた時
自宅での生活が中心になると、外出や人との会話の機会が自然と減っていくことがあります。活動量や社会的な交流が少なくなることは、心身の状態にも影響しうると考えられています。
施設によっては、レクリエーションや他の入居者との交流の機会が用意されており、自宅とは違った刺激やつながりが生まれることもあります。もちろん、合う・合わないは施設の雰囲気やご本人の性格にもよるため、見学の際にどのような時間の過ごし方をしているか確認してみるとよいでしょう。
4.焦らず、情報収集から始める
上記のようなサインは、「今すぐ入居しなければならない」という意味ではありません。ただ、いざ必要になってから情報を集め始めると、希望に合う施設がすぐに見つからないこともあります。
まだ余裕があるうちから、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談したり、いくつかの施設を見学して雰囲気や体制を知っておいたりすることが、後になって「落ち着いて選べた」という安心につながります。
施設にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴や対象となる方が異なります。まずは全体像を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
まとめ
施設入居を考えることは、介護を投げ出すことではなく、ご本人とご家族、双方にとって無理のない生活を選び直すことです。判断に迷う時は一人で抱え込まず、ケアマネジャーや地域包括支援センターなど、身近な相談先に話してみてください。

