パーキンソン病の方にとって、口の中を清潔に保つ「口腔ケア」は、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん:本来、食道へ送り込まれるべき食べ物や唾液、胃からの逆流物などが誤って気管から肺に入ってしまい、一緒に流れ込んだ細菌などが原因となって肺に炎症を引き起こす病気)を予防し、安全に食事を楽しむために欠かせない習慣です。しかし、病気の進行に伴って、毎日の歯磨きに難しさを感じることはありませんか?
今回は、パーキンソン病で細かく手を動かすことが難しい状態をサポートし、無理なく自分で歯磨きを続けるための「道具の工夫」について解説します。
1. なぜパーキンソン病で歯磨きが難しくなるのか?
パーキンソン病の代表的な症状には、「安静時振戦(手足の震え)」「筋固縮(筋肉のこわばり)」「無動・寡動(動作が少なく、遅くなる)」などがあります。これらの症状が現れると、手先を使う細かい動作が徐々に難しくなっていきます。
歯磨きは、歯ブラシをしっかりと握り、口の中で細かく動かすという動作が必要です。そのため、症状が進行すると「歯ブラシをしっかり持てない」「小刻みに動かせず磨き残しが増える」といった悩みを抱えやすくなります。
2. 解決策①:電動歯ブラシの活用
手の震えや動作の遅さがある場合、手首や指先を使って歯ブラシを細かく動かすことは大きな負担になります。そんな時に役立つのが「電動歯ブラシ」です。
電動歯ブラシを使えば、ブラシ自体が細かく振動・回転してくれるため、自分でゴシゴシと手を動かす必要がありません。歯の表面や、歯と歯茎の境目にそっと当てるだけで効率よく汚れを落とすことができるため、手先の動かしにくさがある方にとって有効な道具となります。
3. 解決策②:歯ブラシの柄を太くする工夫
指が動かしにくかったり、握力が低下してくると、市販の細い歯ブラシの柄(ハンドル)をしっかり握ることが難しくなります。その場合は、柄を太くして握りやすくする工夫がおすすめです。
粘土で自分専用の持ち手を作る: シリコン粘土(シリコンラバー)や紙粘土などを歯ブラシの柄に巻きつけ、自分の手でギュッと握って固めることで、本人の手の形に一番合った専用の太いハンドルに調整することができます。
専用のグリップをつける: 握る力が弱い方には、スプーンやフォークなどに通して使う専用の太いグリップ(スポンジなど)を歯ブラシに取り付けることも、握る力をサポートするのに有効です。
まとめ
パーキンソン病の症状によって体を動かすことに困難が伴うようになっても、ご本人ができることまで周囲がすべて手助けしてしまうと、かえって運動機能や筋力の低下が進んでしまいます。可能な限り自分で行う歯磨きは、日常のリハビリテーションとしても大切な意味を持ちます。
歯磨きが難しくなったからといってすぐに介助に切り替えるのではなく、電動歯ブラシや柄の太い歯ブラシなど、使いやすい道具を上手に活用して、無理のない範囲でご自身での口腔ケアを続けていきましょう。また、定期的にかかりつけの歯科へ行き、専門的な口腔ケアを受けることもお勧めします。
