他のコラムでは、「道具の工夫」や「スポンジブラシを使ったケアの方法」についてお伝えしてきました。
しかし、パーキンソン病の症状が進行したり、ご本人の体調に波があったりすると、ご家庭での歯磨きやケアだけではどうしても汚れを取り切れないことがあります。そこで今回は、日々の口腔ケアの負担を軽くし、安全に食事を楽しむために欠かせない「定期的な歯科受診」のメリットについて解説します。
1. プロのお掃除で、毎日の歯磨きが「楽」になる
お口の中の汚れ「歯垢」は、時間が経つと石灰化して硬い「歯石」へと変化します。歯石の表面はザラザラしているため、さらに新しい汚れや細菌がつきやすくなるという悪循環を生み出します。また、細菌が強力な膜(バイオフィルム)を作ってしまうと、日頃の歯磨きやうがい薬だけでは除去することができません。
歯科医院で専用の器械を使ってこれらの頑固な汚れや歯石を取り除いてもらうと、歯の表面がツルツルになり、ご家庭での歯磨きやスポンジブラシで汚れがサッと落ちやすくなります。結果として、毎日のケアにかかる時間や労力を大幅に減らすことができるのです。
2. 「合わない入れ歯」の調整で、誤嚥(ごえん)を防ぐ
年齢を重ねたり、歯が抜けたりすると、あごの骨や歯茎の形は少しずつ変化し、これまでピッタリだった入れ歯が合わなくなってきます。
「痛いから」「外れやすいから」と入れ歯を外したままにしたり、合わない入れ歯を無理に使っていたりすると、食べ物をしっかり噛み砕くことができず、丸呑みによる窒息や、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん:本来、食道へ送り込まれるべき食べ物や唾液、胃からの逆流物などが誤って気管から肺に入ってしまい、一緒に流れ込んだ細菌などが原因となって肺に炎症を引き起こす病気)のリスクが大きく高まってしまいます。また、痛みがあることで食欲が落ち、低栄養につながるおそれもあります。
3〜6ヶ月に1度を目安に定期健診を受け、お口の変化に合わせて入れ歯を微調整してもらうことで、安全においしく食事ができるようになります。
3. 痛みを訴えにくい方の「隠れたトラブル」を早期発見
パーキンソン病の方や認知症を合併している方の中には、お口の中に虫歯や歯周病、口内炎などの痛みがあっても、うまく言葉で伝えられない(あるいは痛みを感じにくくなっている)ケースが少なくありません。急に食事のペースが落ちたり、食べこぼしが増えたりした背景に、実は「お口の中のトラブル」が隠れていたということもよくあります。
定期的にプロの目でチェックしてもらうことで、重症化する前に病気を予防・治療することができます。ご家庭でのケアと、専門家による定期的なケアを上手に組み合わせて、ご本人も介護する方も無理のない口腔ケアを続けていきましょう。
