パーキンソン病の症状が進行すると、手の震えや筋肉のこわばりといった運動症状だけでなく、飲み込む力の低下が見られるようになります。そのため、毎日の口腔ケアでは、使いやすい歯ブラシなどの道具選びに加えて、「歯磨き粉」の選び方も重要です。
安全かつ効果的に口の中を清潔に保つための、歯磨き粉選びの3つのポイントを解説します。
1. 口腔ケア中の誤嚥を防ぐ「低発泡・低香味」や「ジェルタイプ」
パーキンソン病では、飲み込むタイミングが遅れやすくなるため、うがいの水や唾液(だえき)を誤嚥(ごえん:本来、食道へ送り込まれるべき食べ物や唾液、胃からの逆流物などが誤って気管に入ってしまうこと)するリスクが高まります。
一般的な歯磨き粉には、口の中に成分を広げるための「発泡剤」や、爽快感を出すための「香味剤・清涼剤」が含まれています。強い清涼感や香りは、実際には汚れが落ちていなくても「十分に磨いた」と誤認させてしまうおそれがあります。また、泡立ちが良すぎると口から溢れたり、誤嚥の原因になりやすくなります。使う際は、グリンピース1粒くらいを目安に使用しましょう。
水分にとろみがないとむせてしまう方や、むせやすい方には、「泡立ちの少ない(低発泡)タイプ」や、うがいの水が少量で済む「ジェルタイプ・液体タイプ」の歯磨き粉がお勧めです。
2. 歯を傷つけない「低研磨・研磨剤無配合」
多くの歯磨き粉には、歯垢や着色汚れ(ステイン)を落とすために「研磨剤」が含まれています。しかし、研磨剤入りのものを過剰に使用したり、力を入れて磨きすぎたりすると、歯の表面のエナメル質を傷つけて削ってしまうことがあります。
パーキンソン病特有の手の震え(安静時振戦)や筋肉のこわばり(筋固縮)がある場合、ご自身で磨く際の力加減が難しくなることがあります。歯や歯肉へのダメージを防ぐためには、研磨剤が無配合、または低研磨の歯磨き粉を選ぶと安心です。
3. 目的に合わせた「薬用成分」の活用
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん:本来、食道へ送り込まれるべき食べ物や唾液、胃からの逆流物などが誤って気管から肺に入ってしまい、一緒に流れ込んだ細菌などが原因となって肺に炎症を引き起こす病気)を予防するためには、口の中の細菌を減らすことが第一歩です。 歯磨き粉のなかには、薬理効果が認められた「医薬部外品」があり、目的に応じた薬用成分が配合されています。
- 虫歯・誤嚥性肺炎の予防に: 口の中の細菌を減らす「殺菌剤」や、歯の再石灰化を促して歯を強くする「歯質強化剤」が配合されたもの。
- 歯周病対策に: 歯肉の炎症を抑える「消炎剤」や、歯肉の血行をよくする「血行促進剤」が配合されたもの。
ご自身の口の中の状態(虫歯になりやすい、歯茎が腫れやすいなど)に合わせて、これらの薬用成分を賢く活用しましょう。
まとめ
パーキンソン病の方の口腔ケアでは、「どのような道具を使い、どのような歯磨き粉を選ぶか」が、日々の負担を大きく軽減し、誤嚥性肺炎などのリスクを下げる鍵となります。
ご自身の状態に最も合った歯磨き粉の選択や使用の可否について迷った場合は、一人で抱え込まず、かかりつけの歯科医師や歯科衛生士によく相談してみてください。
