「明らかにむせているわけではないけれど、なんとなく食事が進まなくなった」と感じることはありませんか?
パーキンソン病による嚥下障害(えんげしょうがい:食べたり飲んだりすることが難しくなる状態)は、ご本人もご家族も気づかないうちに少しずつ進行することが多いのが特徴です。今回は、専門的な検査を行う前に、ご家庭での日々の観察から「食べる力の衰え」を早期にキャッチするためのチェックポイントを解説します。
1. 専門家も使う「EAT-10」の考え方
医療や介護の現場では、嚥下障害の早期発見のために「EAT-10(イートテン)」という10項目の質問からなる評価ツールが使われています。無料でインターネットから印刷できます。このEAT-10の視点をご家庭での観察に活かすと、以下の「7つのチェックポイント」が見えてきます。
- 体重減少: 1か月間で体重が減った、または痩せてきたように見える。
- 調理の工夫: 家族と同じものを食べられなくなり、細かく切るなどひと手間加えるようになった。
- 食べ方・飲み方: むせないように慎重に、または力を入れて飲み込んでいる。
- 薬の飲み方: 錠剤をそのまま飲めず、「砕く」「包む」「溶かす」などの調整必要になった。
- 食べる時間: 1回の食事に30分以上かかるようになった。
- 食事中のサイン: 飲んだり食べたりするときに、咳払いをすることが増えた。
- 食べる量: 1回の食事の摂取量が減ってきた。
2. 合計「3点」が見逃せない危険信号
EAT-10では、各項目を0〜4点で評価し、合計が「3点以上」になった場合は、嚥下障害の疑いがあると判断されます。つまり、上記のような日常の些細な違和感に「いくつか当てはまる」と感じた時点で、すでに飲み込む機能に何らかの問題が起きている可能性が非常に高いということです。
3. 「むせない誤嚥(不顕性誤嚥)」に注意する
観察において最も注意すべきは、「むせ(咳き込み)がない=安全」ではないということです。
パーキンソン病の方はのどの感覚が鈍くなりやすいため、食べ物が気管に入ってもむせが出ない「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」を起こしていることがあります。「食後に声がガラガラする(湿性嗄声)」「最近、痰が増えた」といった、咳以外の小さな変化にも耳を澄ませることが重要です。
― 早期発見が「食べる喜び」を継続させる鍵
「食べる力」の衰えは、むせや引っかかりといった分かりやすい症状だけでなく、食事時間の延長や体重減少など、多面的な視点で見抜くことが大切です。これらのサインに早く気づいて対策を打つことが、誤嚥性肺炎を未然に防ぎ、おいしく食べる期間を長く保つことにつながります。
チェックポイントに当てはまる項目があったり、日々の食事で少しでも違和感を覚えたりした場合は、決して様子見にせず、医師や看護師、言語聴覚士などに早めに相談し、適切な評価とアドバイスを受けてください。
