「むせずに全部食べているから大丈夫!」と安心していませんか?
実は、パーキンソン病の食事において最も気をつけなければならない注意点の一つが、”むせない誤嚥(不顕性誤嚥:ふけんせいごえん)”です。今回は、見逃しやすい危険なサインと、ご家庭でできる対策を解説します。
1. なぜ「むせない誤嚥」が起きるのか?
健康な人は、食べ物が誤って空気の通り道である「気管」に入りそうになると、激しく「むせ(咳込み)」て外に吐き出そうとします。
しかしパーキンソン病になると、脳内のドパミン不足によって「サブスタンスP」という物質が減減少じ、のどの感覚が鈍くなってしまうことがあります。その結果、食べ物や唾液が気管に入り込んでも、体がそれに気づけず「むせる」という防御反応が起きないまま、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)になってしまうことがあります。
2. 見逃してはいけない「隠れたサイン」
むせることがなくても、以下のようなサインがあれば、のどに食べ物が残っていたり、誤嚥していたりする可能性があります。
- 食後の「ガラガラ声(湿性嗄声:しっせいさせい)」: 食べた後におしゃべりをした際、痰のからんだようなガラガラ、ゼロゼロといった湿った声に変わっている場合
- 原因不明の微熱や痰の増加: 食後や夜間に咳き込んだり、微熱が続いたりする場合
3. 食事中・食後にできる予防策
食事中や食後の誤嚥を防ぐために、以下の工夫を取り入れましょう。
- 交互嚥下(こうごえんげ): パサつくおかずや、お粥などのベタつくものを食べた後に、お茶ゼリーやとろみ付きの水分を挟むことで、のどに残った食べ物を洗い流すことができます。
- 空嚥下(からえんげ): 一口飲み込んだ後に、食べ物を口に入れず「もう一度ゴクンと唾液を飲み込んでください」と促し、のどを空っぽにします。
- 食後はすぐに寝ない: 食後30分〜1時間は上半身を起こした姿勢を保ち、胃からの逆流を防ぎます。
小さなサインに気づくことが安全への第一歩
「食」は生命維持の手段であると同時に、人生の大きな楽しみでもあります。むせがないからと安心するのではなく、食後の「声の変化」や「痰の量」といった小さなサインに気づくことが、肺炎を防ぎ、安全な食事を長く続けるための第一歩です。
少しでも「いつもと違う」と感じた場合や、食後のガラガラ声が続く場合は、無理に今の食事形態を続けず、医師やケアマネジャーに相談し、看護師や言語聴覚士といった専門家の意見を聞いてみることを強くお勧めします。
