高齢になると、噛む力の低下や飲み込む力の衰えにより、これまで通りの食事が難しくなることがあります。「柔らかい食事」を調理することで誤嚥(ごえん)や窒息を防ぎ、低栄養を予防し、食べる喜びを維持することは非常に重要です。
今回は、家庭や施設で実践できる、食材を柔らかく食べやすくするための具体的な調理テクニックをご紹介します。
1. 食材を「柔らかくする」調理の工夫
ただ煮込むだけでなく、科学的な工夫を加えることで、食材の形を残したまま柔らかく仕上げることができます。
- 長めにゆでる・煮る:葉野菜などは通常より長く(3分以上など)加熱します。また、重曹を加えてゆでると、野菜の繊維がより柔らかくなります。
- 蒸し焼きにする:魚や肉は長時間焼くと硬くなります。フライパンで蓋をして蒸し焼きにし、余熱を利用することで、水分を保ったままふっくらと仕上がります。
- 漬け込みの活用:肉用酵素を使用するほか、みじん切りにしたマイタケ、すりおろしたパイナップル、ヨーグルトなどに漬け込むことも有効です。
2. 咀嚼をスムーズにする「切り方」
食材の繊維の向きを意識して包丁を入れるだけで、噛みやすさは格段に変わります。
- 繊維を断ち切る:肉や野菜は繊維に対して垂直に包丁を入れます。これにより、口の中で筋が残りにくくなります。
- 隠し包丁・切り目を入れる:食材の表面に格子状や蛇腹(じゃばら)状の切り目を入れることで、歯が入りやすくなり、噛み出しがスムーズになります。
- サイズと厚みの調整:かたい根菜類は5mm以下の厚さに切り、葉野菜の茎は1cm程度、葉は2cm程度に切り分けると食べやすくなります。
3. 口の中でバラけさせない「まとまり(凝集性)」
嚥下障害がある方にとって、バラバラとした食べ物は喉に残りやすく危険です。
- とろみとあんかけ:煮汁にとろみ調整食品でとろみをつけたり、「あん」をかけることで、食材がバラけず一塊(食塊)になりやすくなります。
- つなぎやあえ衣の活用:卵、豆腐、マヨネーズなどを「つなぎ」や「あえ衣」として使うと、しっとりとして口当たりが良くなります。
- 粘り気のある食材:長芋、オクラ、納豆などの粘りがある食材を混ぜることも、まとまりを助けるのに有効です。
4. 食材選びのポイント
調理の工夫に加え、もともと「飲み込みやすい食材」を選ぶことも大切です。
おすすめの食材
豆腐、卵豆腐、はんぺん、ハンバーグ、煮魚、完熟バナナ、ヨーグルトなどは、比較的噛む力が弱くても噛みやすく、まとまりやすいためおすすめです。
注意が必要な食材
もち、こんにゃく、イカ、タコ、ナッツ類、のり、パサつくパンなどは、窒息や誤嚥のリスクが高いため注意が必要です。
「柔らかくすること」と「まとまりやすくすること」
柔らかい食事作りは、「食材を物理的に柔らかくすること」と「口の中でまとまりやすくすること」の両立が鍵となります。
見た目や香りにも配慮し、本人の嗜好に合った「おいしい」と感じられる食事を提供することで、食べる意欲を引き出していきましょう。迷う場合は、管理栄養士や言語聴覚士などの専門家に相談することをお勧めします。