副腎白質ジストロフィー
副腎白質ジストロフィーとはどんな病気?症状、治療、公的補助を解説いたします。
副腎白質ジストロフィーとは
副腎白質ジストロフィーとは、脳・脊髄など神経や、ホルモンを産生する臓器・副腎の機能に異常が現れる疾患です。歩行障害、認知機能障害、精神障害、まひなどが生じます。
遺伝性の疾患で、患者さんは男性2~3万人に1人の割合と推計されています。遺伝子変異を持っている人の数は男女同じくらいと考えられていますが、男性の方が重症化する傾向があります。女性は症状を示さないケースが多く、一部では加齢とともに軽度の歩行障害が現れる場合もあります。
- 副腎白質ジストロフィーの原因
X染色体(男性は1つ、女性は2つ持つもの)の遺伝子の異常が原因だとわかっています。
原因となる遺伝子は、ALDPと呼ばれるタンパク質を作っています。このタンパクに異常があることにより、「極長鎖脂肪酸」という物質の細胞内での移送がうまくいかなくなります。
移送がうまくいかないと「極長鎖脂肪酸」を分解できず、細胞内に蓄積します。その結果、副腎・中枢神経に異常を引き起こすのではないかと考えられています。
- 副腎白質ジストロフィーの症状・予後
小児で発症した場合は、症状は進行性です。徐々にコミュニケーションがとれなくなり、無治療のまま放置すると1~2年で寝たきり状態となります。
初期には、学力の低下、学校で落ち着きがなくなる、斜視、視力・聴力の低下、歩行時に足がつっぱるなどの症状が見られます。成人で発症した場合は、主に歩行障害が認められます。その他にも知覚障害、尿失禁、インポテンツなどの症状が現れます。
知能の低下が見られない慢性型(AMN)のタイプと、小児と同じように知能低下から急速に進行して寝たきり状態になってしまうタイプ(成人大脳型)があります。
- 副腎白質ジストロフィーの医療費助成など
副腎白質ジストロフィーは、小児慢性特定疾病と指定難病の対象です。そのため、医療費助成制度の対象になります。
受けられる医療費助成は、病気の重症度や毎月の治療費に応じて、都道府県などの地方自治体に申請します。認定がおりると「医療受給者証」が交付され、医療費の助成が受けられます。
また身体機能障害の程度に応じて、身体障害者手帳の申請を行います。手帳が交付されると、介護用品の支援などが受けられます。
副腎白質ジストロフィーの介護にあたって4つの注意点
1.食事について
副腎白質ジストロフィーは初期の段階では、通常通りの食事を行うことが可能です。
食事をする際の食べる動作や食器を持つ動作はリハビリにも繋がるため、本人のできる範囲は見守りながらサポートを行うことが大切です。またステージが進んだ際は、きざみ食やとろみ食を導入するなど医師と相談しながら進行スピードに合わせて介護しましょう。
2.衣服の着脱について
副腎白質ジストロフィーは残された機能を維持するためのリハビリも大切です。衣類の着脱はサポートを行いながら、時間がかかってもなるべく本人の力で行うように心がけましょう。その際、マジックテープタイプの服やゴムのズボンなど着脱しやすい服を利用するのもおすすめです。
3.住環境について
副腎白質ジストロフィーは初期の症状として、つまずきや転倒が多く見られます。フローリングとカーペットの境目や、引き戸の敷居などもつまずきの原因となります。なるべく段差を減らす、転倒した際に危険な家具を撤去するなど出来る範囲で行いましょう。
4.入浴・排泄について
副腎白質ジストロフィーは思春期で発病することも多い病気のため、入浴・排泄の際は身体面だけでなく精神面の配慮も必要になります。入浴・排泄の介護は同性が行うなど、本人と話し合いながら一人ひとりにあったサポートを行いましょう。
副腎白質ジストロフィーは介護保険が適用されるの?
結論から申し上げますと、副腎白質ジストロフィーは特定疾病ではなく介護保険は適用されません。ただし厚生労働大臣が定める疾病となっているため、医療保険による訪問介護の利用が可能になります。週4日以上、2か所以上の訪問介護が医療保険によってサポートされるため、利用を検討するのが良いでしょう。
また副腎白質ジストロフィーは訪問介護以外にも、医療費補助や生活支援を受けることも可能です。障害者手帳を取得することにより就労サポート、公共交通機関や公共施設の割引なども受けられます。
【まとめ】家族以外に話し相手を見つけよう
副腎白質ジストロフィーは思春期や30歳未満など、比較的若齢から発病しやすい病気です。また知能が徐々に低下していく症状も見られるため、家族には不安や悩みを相談し辛く強く当たってしまうというケースも珍しくありません。
負担やストレスを感じたら、家族との関係が崩れてしまう前に訪問介護や介護施設を利用するのがおすすめです。家族以外に話し相手を見つけることで愚痴や不安を話す相手ができ、家族との関係が円滑になるでしょう。