プリオン病
プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病)はどんな病気?症状、治療、公的補助を解説いたします。
プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病)とは
プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病)とは、脳組織が海綿(スポンジ)状になる進行性の疾患です。現在のところ治療法がなく、最終的には死に至ります。
「プリオン」と呼ばれるタンパク質が脳に異常に沈着・変化することで発生します。
100万人に一人の割合で弧発性(遺伝性ではない)または家族性に生じ、日本では年間100〜200人の患者さんの発病が報告されています。
- プリオン病の原因は不明
この病気の原因は、プリオンと呼ばれる感染因子で、その本体は異常なプリオン蛋白であると考えられています。
異常プリオン蛋白が中枢神経系に蓄積することで致死性のある神経障害をもたらします。しかしどのように感染したり発症したりするのかは分かっていません。
全症例の85~90%は孤発性の(遺伝性ではない)もので、自然発生的に発症しています。プリオン病の患者さんとの日常的な接触によって感染したという報告は現在ありません。
感染した特殊な例としては、この病気でなくなった患者さんの角膜や脳硬膜を移植された人で発症した例や、牛海綿状脳症(狂牛病)がヒトに感染した疑いのある例などが知られています。
- プリオン病の予後
多くの場合は急速に進行します。発病後数ヶ月で寝たきりとなります。その後、徐々に全身衰弱、呼吸麻痺などが現れ、肺炎などで死亡します。
- プリオン病の治療法はない
現在、プリオン病には根治的な治療法がありません。通常は症状が現れて数ヶ月から1~2年ほどで死に至ります。治療は、症状や不快感の軽減が中心となります。
プリオン病の症状
行動異常、性格変化、視覚異常、歩行障害などが見られます。
また発病から数ヶ月以内に認知症が急速に進行します。
手足・顔・体などがピクピクと動く「ミオクローヌス」と呼ばれる症状も現れます。
発病から半年以内に自発運動はほとんどできなくなり、寝たきりの状態となります。
どのようなときにプリオン病に感染するか
プリオン病は、日常的な接触による感染はありません。
以下のような手術や血液を介しての感染が報告されています。
- 脳手術・脊髄手術に伴うヒト硬膜移植をした場合
- 下垂体由来の生長ホルモン製剤
- 角膜移植
- 脳深部電極による脳波記録
プリオン病で必要な日常生活での注意
プリオン病であることがわかった場合、日常生活でいくつか注意点があります。
1.献血をしない
血液を介して感染する可能性があります。他の人への感染を防ぐため、献血をすることはできません。
2.受診時は必ず医療機関に病気のことを伝える
手術や血液を通して感染する可能性があります。他の人への感染を防ぐため、医療機関を受診する際には、必ずこの病気と診断されていることを伝えます。
プリオン病の患者さんが受けられる助成制度
プリオン病は、厚生労働省の定める「指定難病」です。そのため、「特定疾患治療研究事業」の医療費助成制度の対象になります。
受けられる医療費助成は、病気の重症度や毎月の治療費によって異なります。自分で申請する必要があり、都道府県などの地方自治体に申請します。
認定がおりると「医療受給者証」が交付され、医療費の助成が受けられます。
またプリオン病は介護保険が適用される特定疾病でもあります。そのため40歳以上65歳未満の患者さんでも、申請すれば必要な介護保険サービスで助成を受けることができます。
プリオン病の介護にあたって4つの注意点
1.食事について
プリオン病の食事介護については、症状によって大きく異なります。
例えば無動無言の状態でも誤嚥機能は問題なく食事が出来る人もいれば、胃ろうが必要な人もいます。また誤嚥機能はあっても、認知機能の低下に伴い食物の認識が出来なくなるケースも珍しくありません。医師と相談しながら一人ひとりに合わせた介護を行いましょう。
2.衣服の着脱について
プリオン病は発病すると、進行スピードの早い人では数か月で寝たきりの状態になるとされています。そのため、衣類の着脱については介護者が行うと考えた方が良いでしょう。
着脱の介護を行う場合、上半身はマジックテープで止めることのできる前開きの服が適しています。また下半身は排泄介助のことも考え、ゴムタイプのゆるめのズボンが便利です。
3.住環境について
プリオン病は進行が早く、本人や家族の受け入れ態勢が追い付かないケースも多いです。
医師と相談しながら、電動ベッドや車椅子の導入など出来る範囲で行いましょう。また自宅での介護が難しいと感じた場合は、訪問介護や介護施設などの選択肢もあります。考え込まず医師と二人三脚でサポートを行いましょう。
4.入浴について
プリオン病は歩行可能な状態であっても、視覚異常や失行により介助が必要になる可能性が高いです。シャワーチェアの使用や入浴・更衣動作など、本人の状態を見ながらサポートを行いましょう。また歩行が難しくなった場合は、機械浴を行う必要があります。タッチングを行いながら、安心感を与える入浴介助を行いましょう。
プリオン病は介護保険が適用されるの?
プリオン病は国が定める特定疾患における「初老期の認知症」に含まれるため、介護保険が適用されます。介護保険制度を受けるためには、プリオン病の中でも要介護認定を受ける必要があります。プリオン病を発病したら最寄りの保健所へ申請を行いましょう。
介護保険制度を受けると訪問介護やデイケア・ショートステイといった居宅サービス、グループホーム・夜間対応型訪問介護といった地域密着型サービス、特別養護老人ホームなどさまざまなサービスの利用が可能です。
【まとめ】プロと意見交換の場を設けるという選択肢
プリオン病は身体機能だけでなく、認知機能も早いスピードで低下していく病気です。ステージが進むと無動無言状態となり、本人の思いを聞くことが難しくなるでしょう。
自宅での介護を少しでも負担に感じた時は、訪問介護や介護施設の利用を検討するのも良いかもしれません。訪問介護や介護施設を利用し、プロと意見交換をすることで本人と家族にとってよりよいサポートを行えるでしょう。