「お茶や水を飲むとよくむせるようになった」というお悩みはありませんか?
水分でむせるのを防ぐために「とろみ」をつけるのは大変有効な方法ですが、実は使い方を間違えると、かえって誤嚥(ごえん)の危険を高めてしまうことがあります。今回は、水分でむせることを防ぐための、正しいとろみのつけ方と注意点について解説します。
1. なぜ「さらさらした液体」はむせやすいのか?
パーキンソン病の症状が進むと、筋肉の動きが遅くなり、飲み込む瞬間に空気の通り道である「気管」にふたをする反射も遅れがちになります。
水やお茶のような「さらさらした液体」はのどを通るスピードが非常に速いため、反射が起こる前に「気管」に流れ込んでしまい、むせや誤嚥を引き起こしやすいのです。とろみをつけることで、のどを通るスピードをゆっくりにし、飲み込むタイミングを合わせやすくすることができます。
2. 「濃いほうが安全」は間違い!とろみの落とし穴
むせが怖いからといって、「とりあえず濃いとろみをつける」のは実はとても危険です。
- のどに張り付く危険(嚥下後誤嚥): とろみを濃くしすぎるとベタつき(付着性)が強くなり、のどに残りやすくなります。その残ったものが、後からポタポタと気管に落ちて肺炎の原因になることがあります。
- 水分不足を招く: 濃いとろみは風味を損ない、「おいしくない」と感じさせてしまいます。また、胃に重くたまってお腹が張りやすくなる(腹部膨満感)ため、結果的にご本人が水分を飲みたがらなくなり、脱水を引き起こす恐れがあります。
とろみは「スプーンを傾けるとスーッと流れる程度(薄いとろみ)」から始め、むせの状況を見ながら最低限の濃さに調整することを推奨します。
3. 飲み物で変わる!失敗しないとろみの付け方
とろみ剤は、飲み物の温度や成分によって固まり方が大きく変わります。
- 牛乳や栄養補助食品: タンパク質や脂肪分を含むものは、とろみがつくのに時間がかかります。一度よく混ぜたあと、5分ほど置いてから再度かき混ぜる「二度混ぜ法」が必要です。直後に「とろみが足りない」と粉を足してしまうと、後からガチガチに固まってしまうので注意しましょう。
- オレンジジュースや味噌汁: 酸味が強いものや塩分が多いものも、とろみがつきにくい性質があります。少し長めに時間を置いて様子を見ましょう。
適切な「とろみ」で水分補給を
とろみは、水分の流れをコントロールし、誤嚥を防ぐための大切な工夫です。むせが怖いからと安易に濃くするのではなく、飲み物の性質を知り、最低限の薄いとろみから適切に調整することが、無理なく安全に水分を摂るポイントです。
しかし、安全に飲める「とろみの濃さ」は、個人の飲み込む力によって全く異なります。むせが続く場合や判断に迷う場合は一人で抱え込まず、医師やケアマネジャーに相談し、言語聴覚士や管理栄養士といった専門家の意見を聞いてみることを強くお勧めします。
